kumaniji      (くまにじ)

「1人ひとりが大切にされ、その人らしく生きられ、セクシュアルマイノリティも住みやすい熊本」 「ここでは暮らせないからと出て行く人がいない熊本」 そんな熊本に手をたずさえて一緒に変えていきましょう。

2021年熊本県内全市町村選挙管理委員会へのアンケート調査結果報告

熊本県内の全市町村の選挙管理員会に対して、「投票に関する書類の性別欄の記載及び投票所での性別確認に関する要望と質問について」(添付しています)と題する書面を送付し、アンケート調査(以下、「2021年調査」といいます。)を行いました(調査期間:2021年9月15日から同月末日)。

 ご回答くださった市町村選管の皆さまに感謝申し上げます。

弊団体が選挙管理委員会に対する調査を始めたのは、性的マイノリティを対象としたアンケート調査(2017年12月から2018年2月にかけて弊団体が熊本県在住または元在住のセクシュアルマイノリティを対象に行い、274名の方から有効回答を得たもの)において記載されていた次の困りごとがきっかけでした。

 「期日前投票に行った際、本人確認で本人ですと言い張ってもダメで、たしか免許証も見せました。仕方なく、性同一性障害なんです。と言わないといけない時がありました。そんなに大きい声では言えないので『実は・・』と話したのですが、その職員さんが、大きな声で復唱したので、もう逃げ出したいと思いました。それが1番困りましたし、恥ずかしかったです」

 選挙権という基本的な権利が、形式的には保障されていても、実質的には侵害されることがあることを示す回答でした。

 後述のとおり、2018年以来3年ぶりの調査において、多くの自治体が取り組みを進められ、大きく状況が改善したことをとてもありがたく思っています。

アンケート調査回答一覧(外部リンク)

⇓ 

docs.google.com

アンケート設問1

 1-1 選挙事務従事者に周知させるための施策について

問1「投票の際の本人確認につき性別に関する配慮を選挙事務従事者に周知させるための施策を行っていますか?」

 1-2 周知させるための具体的施策について

2021年調査で「行っている」と回答した自治体が行っている具体的施策は以下のとおりです。

    ※(回答があった自治体のうち、くまにじが特に望ましいと思った対応が記載されている回答を主にあげています) ・研修 20自治体(64.5%)


    ■熊本市:選挙事務従事者への研修時に、性別に関する配慮(本人確認時に性別を聞かない)を述べる予定
    ■合志市:本人確認の際、名前のみの確認とし、選挙人がそれに応えたらそれ以上の確認(性別など)はしないように指導している。投票用紙自動交付機の性別ボタンは、選挙人に見えないように目隠しするように指導している。

    ■玉名市:本人確認は、名簿番号、氏名、生年月日で確認を行い、性別の確認はしていない。

    ■南小国町:選挙事務従事者に対する事務説明会において、入場券には性別を記載しないので男女別の集計は選挙人名簿から行うよう指示している。

    ■西原村:前回の村長・村議選(R2年9月)より、事前の事務従事者への説明会にて、入場券などによる本人確認に対して、性別による確認はしないよう、又、投票者に対する配慮など怠ることのないよう注意を徹底している。

    ■南阿蘇村:投・開票事務説明会において、性別を尋ねることがないよう指導している。 ・手引等に記載を設けた 14自治体(45.2%)

      ■荒尾市:「選挙人の容姿等から、本人ではないと推測される場合に限り、選挙人に生年月日を口述させること。LGBTなど性的マイノリティの方がいることを考慮して、性別は聞いたりせずに選挙人の人権には十分に配慮した対応を心掛ける。⇒本人確認は、氏名・住所・生年月日を基に行うこと」      

      ■和水町:LGBTなど性的マイノリティの選挙人に係る投票環境向上を目的に、入場券に「性別」表示をしていません。本人確認において、不審な点がある場合は、住所、氏名及び生年月日で確認を行い、性別を直接、尋ねないように注意してください。
       ■大津町:LGBTなど性的マイノリティの選挙人への配慮から、選挙人氏名と身なりが明らかに違う場合(男性と思われる名前であるが、身なりは女性等)であっても、その場で執拗に確認するのではなく、周囲に配慮し、本人確認を行うこと。
        

       ・その他 5自治体(16.1%) 

研修、手引き等で、本人確認に際し、性別による確認をしないようにしている自治体が多数見受けられました。

 また、合志市では、「投票用紙自動交付機の性別ボタンは、選挙人に見えないように目隠しするように指導している」とのことで、本人確認以外の点でも配慮がなされていました。

 なお、手引きを参考資料として提供くださったほぼ全ての自治体において、「LGBTなど性的マイノリティ」などといったLGBTなど性的マイノリティ全般につき、性別による配慮が特に必要との記載が見受けられました。

 しかし、法律上の性別と社会生活上の性別や見た目の性別、また、法律上の性別と名前から推測される性別が一致しない場合等に支障があるにもかかわらず、「LGBTなど性的マイノリティ」とあると、それらの不一致がない性的マイノリティも困るかのような誤解を生じかねません。また、性的マイノリティでなくても、それらの不一致で困る人もいます。つきましては、LGBTなど性的マイノリティとまとめてしまわず、注意点をご記載いただきますようよろしくお願いいたします。

 


アンケート設問2

2 投票関係4書類(投票所入場券、不在者投票証明書、不在者投票宣誓書(兼投票用紙請求書)、期日前投票宣誓書)における性別表記や性別記入欄の有無について

2-1 投票所入場券

2-2 不在者投票証明書

2-3 不在者投票宣誓書(兼投票用紙請求書)

2-4 期日前投票宣誓書

設問2について回答から

    ※前にあるのが2021年です。【】内が2018年です。


    2-1 投票所入場券 ・性別そのものを表記 8(18%)
    【36(80%)】

    ・数字等で一見して分かりにくくしている 18(40%)
    【5(11%)】

    ・性別に関する記載は、ない
    14(31%) 【4(9%)】

    ・その他 000%)
    【0(0%)】

    ・回答未受領 5(11%)
    【0(0%)】

     合計 45
    【45】


    ※その他の回答が、内容としては、「数字等で一見して分かりにくくしている」でしたので、「数字等で一見して分かりにくくしている」に変更しました(訂正:2021年10月21日)


    2-2 不在者投票証明書 2021年 【2018年】

    ・性別そのものを表記 4(9%) 【14
    (31%)】

    ・性別に関する記載は、ない 35(78%)
    【31(69%)】

    ・その他 1(2%)
    【0(0%)】

    ・回答未受領 5(11%)
    【0(0%)】

     合計 45
    【45】


    2-3 不在者投票宣誓書(兼投票用紙請求書) 2021年
    【2018年】

    ・性別記入欄が、ある 3(7%)
    【20(44%)】

    ・性別記入欄が、ない 37(82%)
    【21(47%)】

    ・その他 0(0%)
    【4(9%)】

    ・回答未受領 5(11%)
    【0(0%)】

     合計 45
    【45】


    2-4 期日前投票宣誓書  2021年
    【2018年】

    ・性別記入欄が、ある 4(9%)
    【19(42%)】

    ・性別記入欄が、ない 36(80%)
    【23(51%)】

    ・その他 0(0%)
    【3(7%)】

    ・回答未受領 5(11%)
    【0(0%)】

     合計 45
    【45】


    投票関係4書類のいずれにおいても、性別記載や性別記入欄がない自治体が大幅に増えました。 いずれかの書類において、性別記載や性別記入欄がある自治体も、「やめる予定あり」5自治体、または「検討中」6自治体で、「やめる予定がない」との回答は、津奈木町のみでした(津奈木町は、不在者投票証明書以外の3書類に性別記載や性別記入欄あり)。

    やめることを検討している自治体の検討事項としては、「入場券に関して、システム改修費用が不明のため、見積などを聴取し今後検討していく」、「今後、システム改修(予算措置が必要なため)も含めて検討している。」、「選挙事務に支障がないか、検討する必要がある(集計当日の投票事務等)」、「不在者投票証明書の性別欄について、システムより出力するもの。システム会社と見直しについて検討したい。」があげられています。